2022年6月6日

太陽光発電の基本

ソーラーシェアリングについてはこの記事を読めば分かる!メリット・デメリット、仕組み、制度などを徹底解説!

ソーラーシェアリングについては導入をご検討の方、興味がある方、この記事を読めばすべてが分かります!

ソーラーシェアリング

世界中で脱炭素が加速する中で、日本も本格的にカーボンニュートラルへの取り組み強化や、再生可能エネルギーの促進に取り組んでいます。

そのなかに「ソーラーシェアリング」と呼ばれる取り組みがあるのをご存じでしょうか。

ソーラーシェアリングは、ソーラーパネルを使った少し特殊な太陽光発電で、現在アグリソリューションの一つとして、大きな市場になりつつあります。

そんなソーラーシェアリングについて、詳しく解説します。

ソーラーシェアリングとは?

ソーラーシェアリングとは、農作物を育てて収穫する「農地」に太陽光パネルを設置し、農業と太陽光発電を同時に行なう太陽光発電の方法です。

再生可能エネルギーの新しい普及方法として、今注目が高まっています。

停滞する農業を促進させる目的もある

ソーラーシェアリングは「営農型太陽光発電」とも呼ばれ「農地」で行なうことが条件となっています。

作物の収穫と太陽光発電で得られる電力を売電することで、安定した収入を得られるようになり、増加しつつある荒廃農地にストップをかけることが期待できます。

また農地転用でなく、農業を続けながら太陽光発電ができるため、農地をそのまま活かすことができます。発電した電力を農業に活用すれば、光熱費の削減も見込めるでしょう。

ソーラーシェアリングの仕組み

ソーラーシェアリングは、2012年7月に再生可能エネルギー電気の固定価格買取制度(FIT)が導入された後に普及し始めました。

普及のきっかけは、農林水産省が2013年に「支柱を立てて営農を継続する太陽光発電設備等についての農地転用許可制度上の取扱いについて」との通達を出したことです。

しかし普及しているとはいえ、まだまだ野立ての太陽光発電と比べるとメジャーではありません。そんなソーラーシェアリングはどのようにして行うのでしょうか。

その仕組みについて、理解しておきましょう。

農地の約3m上空に太陽光パネルを設置する

ソーラーシェアリングで使用する太陽光パネルは、耕作地から約3m上空に設置されます。土地では農作物を育てて、その上空では太陽光発電で得た電力を売電して収益を得る仕組みです。

もともと農地は日当たりの良い場所に作られているため、太陽光発電には適している場所であることが多く、発電量にも期待できます。

近年ではアグリソーラーハウスも誕生している

2013年当初には、単に耕作地の上空にソーラーパネルを設置する方法が主流でした。

ところが、近年ではアグリソーラーハウスと呼ばれる、閉鎖型の農業用ハウスの機能を備えつつ、屋根部にソーラーパネルを設置して太陽光発電を行なう、ハウス型のソーラーシェアリング方式も誕生しています。

このハウス型のソーラーシェアリングでは、椎茸栽培や果樹栽培など、高齢者が体力を必要としない農業の実現を目指しています。

ソーラーシェアリングでは農地の一時転用許可が必要

ソーラーシェアリングを行うには農地の一時転用が必要となり、次のような要件が含まれています。

・いつでも撤去可能な設備であること
・必要最小限でかつ、適正であること
・作物に適した日照量を確保できること
・農業機器が自由に利用可能であること
・設備撤去費の支払いが可能であること

このような要件を満たした上で一時転用を申請し、許可されることで初めてソーラーシェアリングが可能となります。

一時転用の申請に対する注意点

ソーラーシェアリングの申請の際には、注意点もあります。

・原則3年ごとに再申請が必要となる
・条件を満たせば再申請の期間が10年に延長される
・毎年2月末に作物の収穫量や育成状況の報告が必要
・通常の収穫量等より2割以上減った場合には改善策を講じる

ソーラーシェアリングはあくまでも農業がメインで、それを補う形で大規模な太陽光発電が許可されるため、農業を疎かにしてはいけないという内容です。

申請用書類のなかで「遮光率や影の伸長による収穫量予想、設備による育成への影響がないことの具体的な根拠データ」や「知見を有する者からの、申請が作物の生育や周辺農地への影響がない旨の意見書」は、準備に戸惑うかもしれません。

この書類をつくるには、太陽光パネルを設置する専門業者に依頼することとなります。どのみち、個人で大規模な太陽光発電システムを構築するのは不可能。そのため、専門業に依頼することとなりますから、専門業者と二人三脚で申請すれば問題はありません。

ソーラーシェアリングのメリット

では、ソーラーシェアリングを行うことでどのようなメリットを得られるのかを見ていきましょう。

メリット1:売電によって収入が安定する

再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)を利用して、20年間の売電が可能となります。2020年からはFITで買取できる大規模発電は、ソーラーシェアリングのみとなっています。

2022年での売電価格は次のとおりです。

発電量 買取価格
10kW以上~50kw未満 11円/kWh
50kW以上~250kW未満 10円/kWh

もともと農業だけを目的としていた土地に太陽光発電パネルを設置すれば、土地を今以上に有効活用できるのです。

売電価格をシミュレーションしてみると、次のようになります。

土地の面積 発電量 売電単価 年間発電量
農地一反(10a) 49.5Kw 11円/kWh 55,000kWh

売電によって固定収入が得られるので、農業の電気代などに回すことも可能です。

メリット2:後継者問題が解決する

農家の後継者不足の理由の一つに、金銭的リスクと重労働が挙げられます。

しかし、ソーラーシェアリングを行えば売電によって固定収入を得られるため、金銭的リスクを低くできます。金銭的リスクが解消されればアルバイトなどの働き手を増やすこともでき、重労働は軽減可能です。

こうした問題を解消できることで、後継者が就農を検討する後押しとなるでしょう。

メリット3:「青地」など耕作放棄地を有効活用できる

「青地」は、農地の中でも宅地や雑種地などに転用できない農地です。そのため、耕作をしないで荒廃農地になっている土地も多くあります。

しかし条件が合えば、青地でもソーラーシェアリングの導入と売電が可能となり、収益が確保できるようになります。青地の有効活用としても、ソーラーシェアリングは期待の持てる方法です。

メリット4:パネルが下部の作物に良い影響を与える

近年の夏場は温度上昇が高く、作物に悪影響を及ぼすこともあります。そこに、太陽光パネルが設置されることで、直射日光を防ぎ温度を下げる効果が期待でき、作物に良い影響を与えることがあります。

反対に、冬の霜による作物への被害を防ぐ役割も担っているので、太陽光パネルの設置で作物の安定供給に期待できます。

メリット5:設備を使用して防虫ネットなどの設置が容易となる

防虫ネットを必要とする作物もありますが、設置するにはその度に労力を必要とします。

しかし、ソーラーパネルを設置している支柱などの設備を利用すれば、防虫ネットの取り付け、取り外しが簡単になります。その結果、効率よく作物を生産することができて、収穫量アップにつながってきます。

ソーラーシェアリングのデメリット

今度は、ソーラーシェアリングを導入する際の、デメリットについて解説します。

デメリット1:作業効率が悪くなるケースがある

ソーラーシェアリングでは、土地よりも約3m上空にソーラーパネルを設置するので、その下をトラクターなどで作業することは問題ありません。

ただ、ソーラーパネルを支える支柱が必ず設置されるので、パネルが無い状態と比較すると、トラクターなどのスムーズな走行を妨げるケースもあります。

大型の農機具を使うことがない場合は、その心配はなくなります。また、ハウス型のアグリソーラーハウスを利用する際も、このようなデメリットは解消されます。

デメリット2:20年間継続する必要がある

ソーラーシェアリングでは、大規模な太陽光発電での売電が20年間継続できます。これがメリットの一つになるのですが、逆に捉えると20年間ソーラーシェアリングを続ける義務が生じることとなります。

仮に、60歳でソーラーシェアリングを開始したとすれば、80歳まで続けることとなりますから、後継者などソーラーシェアリングを引き継いでくれる人材を、確保しておく必要があります。

年齢が若くても、事故や病気でいつ耕作できなくなるかわかりません。そのときに撤去命令が下ればせっかくの設備投資がムダになってしまうので、後継者や代替者の存在は重要です。

デメリット3:設備費用が高額になる

ソーラーシェアリングの設備費は、一般的な太陽光発電の設備費よりも割高になってきます。

その理由は、土地から約3m上空に設置する必要があるので、強度の高い支柱やそれを支える基礎工事が必要となるからです。

ハウス型のソーラーシェアリングの設備費用は、参考価格として次のようになります。

土地の面積 パネル数 連携出力 遮光率 参考価格
約1反 180枚 49.5Kw 50%・(30%) 約1,600万円・(約2,000万円)

デメリット4:作物の収穫によって改善が要求される

ソーラーシェアリングでは、作物の収穫状況を毎年報告する義務があります。

そのなかで、次のような実態が明らかになると改善要求が出され、改善しない場合は撤去命令が下る可能性もあります。

・作物を耕作していない(売電のみとなっている)
・作物の収穫量が同じ地域の平均と比較して2割以上減少している
・作物の品質が劣っている

毎年、確実な作物の収穫が必要です。

ソーラーシェアリング向けの作物は何?

せっかくソーラーシェアリング導入するなら、前述したデメリットにあるような収穫量の減少や品質の劣化は防ぎたいですよね。「本業である農業の収入を保ちつつ、売電で安定した収入を確保したい」というのが理想の形です。

そこでおすすめなのが、ソーラーシェアリング向けの作物を育てることです。
ソーラーシェアリングに適した作物を育てれば、収穫アップも期待できるでしょう。

ブルーベリーなどの養液栽培

「陰樹」と呼ばれるブルーベリーは、日陰を好む性質があり暑さに弱い果実です。ですからブルーベリーを栽培するには、日陰を作ることが有効とされています。

ソーラーパネルで日陰を簡単に作れるので、ブルーベリーはパネル下部での栽培に適しています。

また、養液栽培で栽培可能なため、水やりなど毎日の作業をシステム化できるメリットがあります。
そのほかに、次のようなメリットもあります。

・ポッドで育てるので草むしりの作業がほとんどない
・太陽光パネルで日陰を作れる
・直射日光からブルーベリーを守る
・約3mの空間があるので育てやすい
・収穫時期が6月~8月。そのため、暑くても日陰で作業できる

養液栽培できソーラーシェアリングと相性の良い作物には、次のものもあります。

・ラズベリー(ジョンスクエアー)
・ミョウガ
・山椒
・榊(さかき)
・アイスクリームブルーバナナ
・オリーブ

きのこ類の菌床栽培

椎茸やキクラゲなどのきのこ類と、ソーラーシェアリングは相性が抜群です。

菌床栽培とは、木材を粉々に粉砕したオガクズなどに、米ぬかなどの養分を混ぜてブロック状に固めた菌床を作り、これにきのこ類の菌タネを入れて栽培する方法です。

菌床栽培を行う場合にも、設備に遮光ネットを張れば栽培環境を簡単に作ることができます。
また、遮光率が高い方がいいのでパネルを水平に設置できるのもメリットといえます。

お茶

ソーラーシェアリングでは、太陽光パネルの下でもお茶の生産が可能です。

また、お茶には改植や新植の時期があり、この時期にはお茶を収穫することができないので、未収益の期間となってしまいます。

ところが、ソーラーシェアリングを導入すれば、この未収穫期間中でも売電によって収益をあげることができるので、とても相性のよい作物となっています。

メインのハウス栽培の暖房費の節約に利用

ソーラーシェアリングを導入するメリットとして、パネル下の作物がメインでないケースもあります。たとえば、大きなハウスでトマト栽培をしている場合、ハウスの暖房費は馬鹿になりません。

そこで、パネル下ではサブとして「馬鈴薯」を栽培し、太陽光パネルで発電した電気で、メインのトマトハウスの暖房を賄う使い方をしている農家もあります。

ソーラーシェアリングによって、ハウス内の暖房費を年間約600万円削減できているようです。

ソーラーシェアリングの制度について

ソーラーシェアリングとは「営農型太陽光発電」とも呼ばれる、農業と太陽光発電を合わせたシステムのことで、「農業」「エネルギー」「街づくり」「環境問題」など、多くの分野で問題を解決できるシステムして期待されています。

制度としては、作物を収穫・販売して得る収入に加えて、太陽光で発電した電力を売電して得る収入と、必要な電力を自家利用することで、農家の収入がアップし農業経営の規模を拡大したり、6次産業化の推進を期待したりする、農林水産省が作った制度です。

あくまでも農業主体の制度であることが重要

ソーラーシェアリングは、太陽光発電で得た電力を売電する間は、必ずパネルの下で農作物を育てて収穫しないといけません。

また、太陽光発電システムの設備を設置するには、一時転用の許可が必要となります。さらに、長期的、安定的に発電事業を行うためには地域の理解を得て進める必要もあるので、営農の長期計画・営農体制の確保・電気事業法に基づく安全対策などに関係する法令を遵守しないとなりません。

そのために、ソーラーシェアリングを申請するには、多くの書類が必要となります。

次からは、ソーラーシェアリングを申請する際に必要な書類一式と、申請方法の手順について詳しく解説します。

申請時の必要書類

ソーラーシェアリングを申請する際に必要な書類は、基本的に26種類あります。
ここでは、どのような書類が必要なのかを解説します。

まずは一覧表で、必要とされる26種類の書類を確認してください。その後に、書類1つずつを詳しく解説します。

1 申請書
2 法人の履歴事項証明書および定款の写し
3 土地の登記事項全部証明書
4 公図の写し
5 位置図
6 周辺土地利用状況図
7 申請地の現地写真
8 土地の契約書の写し
9 事業計画書
10 候補地検討表
11 土地利用計画図
12 設備の図面
13 パネルやパワーコンディショナーのカタログ
14 排水計画図
15 資金計画書
16 資力を証する書類
17 設置および撤去の見積書
18 撤去にかかる合意書
19 設置や撤去に係る工程表・農地復元計画書
20 経済産業省の認定通知書の写し
21 発電会社の受給契約申込書の写しまたは回答書
22 売電による収益シミュレーション
23 営農計画書
24 農作物の生育に係る根拠データ
25 知見を有する者の意見書
26 埋蔵文化財の確認書

1:申請書

第5条申請書および、第3条申請書が必要になります。このうち、第3条申請書も、営農者によっては2種類が必要となるケースもあるので注意が必要です。

また、2部以上を提出する際には、この申請書はコピー不可で、写しでなくすべて押印が必要です。
自治体によって必要部数が異なっているので、各自治体で部数を確認して作成する必要があります。

・第5条申請書および、第3条申請書
・第3条申請書は営農者によって2種類必要なケースもある
・2部以上作成の際には申請書のコピーは不可
・各自治体で提出部数が異なるので確認が必要

2:法人の履歴事項証明書および定款の写し

申請者が法人の場合は「履歴事項証明書および定款の写し」が必要となります。申請者が個人の場合は、住民票の写しが必要です。

・法人:履歴事項証明書および定款の写し
・個人:住民票の写し

3:土地の登記事項全部証明書

一時転用を行う農地の、登記事項全部証明書が必要です。
農地の筆が分かれている場合は、その対象となる農地すべての証明書が必要となります。

登記事項全部証明書に記載されている地権者の住所が現住所と異なる場合は、地権者の現在の住民票も必要です。登記事項全部証明書は、法務局で申請して取得できます。

・申請対象の農地すべての登記事項全部証明書が必要
・地権者の住所が異なる場合は現住所の住民票も必要
・第5条申請にのみ原本が必要なケース
・第5条と第3条の、それぞれの申請に原本が必要なケースがある
・法務局で申請して取得するので、必要な原本を予め確認しておこう

4:公図の写し

公図も、法務局で申請して取得します。

原本が必要となりますが公図をコピーするのはNGですから、申請する農地すべての筆が入るように法務局に申請すると、枚数が少なくて済みます。

公図上で「道」と記載のある里道は赤色に、「水」と記載のある水路は青色に着色します。

・法務局で農地の公図を入手する
・コピーは不可なので必要部数を確認しておく
・「道」の里道は赤色に、「水」の水路は青色に着色しておく

5:位置図

最寄りの駅や公共施設などの目標物から、申請する農地の位置関係がわかる地図が必要になります。最近ではパソコンで、Googleマップを印刷すれば簡単で便利です。

・Googleマップで印刷した地図を、位置図として用意する

6:周辺土地利用状況図

申請地周辺の、土地の利用を書き込んだ図面が必要です。

・隣接地の地目や地籍
・農地であれば所有者や耕作者を記載
・公図に書き込んで提出でもOK
・ただし隣接地の登記事項を調べる必要がある

7:申請地の現地写真

申請地全体が分かるように、最低4方向から撮影した方がよいです。また、撮影位置と撮影方向を示した図面も必要になります。

・最低でも4方向から現地を撮影する
・全体が把握できるように撮影する
・位置図をコピーして、撮影位置と撮影方向を矢印で記入
・写真と撮影位置は番号で分かるようにしておく

8:土地の契約書の写し

申請する農地が借地の場合、申請者と地権者の契約書の写しが必要です。耕作者が他にいる場合は、耕作者と地権者または、申請者の契約書も必要となるのでご注意ください。

契約書には、土地の所在・売買金額または1年間の賃料の記載が必要です。

・借地の場合、申請者と地権者の契約書の写しが必要
・申請者が所有する農地の場合は不要

9:事業計画書

営農計画書とは異なり、土地の基本情報や工事に係る情報を記載したものです。

書式は自由ですが、自治体によっては定型文が用意されているケースもありますから、農業委員会事務局に問い合わせることが大切です。

・申請者や工事施工業者の情報
・事業が必要となった理由
・用排水、切土、盛土の量や防災計画など
・作成を設備の工事業者に頼む場合が多い

10:候補地検討表

必要性と代替性の条件をクリアする必要があり、「色々な土地を検討した結果、このような理由でこの土地を最終的に選びました」との、理由を説明する書類となります。

候補地を最低でも2~3個所の土地を検討した上で、最終決定する必要があり、多くの場合行政書士や司法書士に依頼するのが一般的です。

・2~3個所の候補地を検討した結果、申請の土地に決定した経緯を記載した書類
・多くのケースで行政書士や司法書士に依頼している

11:土地利用計画図

申請地と隣接する土地との境界がハッキリした図面で、設置する設備の俯瞰図を記載した図面のことで、ソーラーシェアリングの申請において重要書類となります。

・ソーラーパネルやパワコン、引込柱の位置と個数、境界からの距離、フェンスの概要や出入口などがわかる図面
・架台の支柱やフェンス部の基礎位置、作物の植え付け間隔、パネルからできる影の位置までも記載が必要
・不備がある場合は、申請のやり直しになるケースもあるので重要な書類

12:設備の図面

設置する予定である設備の平面図、立面図および側面図が必要です。架台が地面より2m以上であることと、傾斜角、影ができる位置の記載も必要な図面となります。

・太陽光発電設備の平面図、立面図、側面図が必要
・架台が地上高2m以上、傾斜角、影ができる位置の記載
・架台の支柱図面は必須
・支柱1本分の接地面積の記載が必要
・引込柱がある場合にはその接地面積も必要
・フェンスを使う場合は、フェンスの立面図、基礎石の設置面積が分かる図面が必要
・導入する業者に作成してもらうケースがほとんど

13:パネルやパワーコンディショナーのカタログ

発電量のワット数が記載されている、パネルやパワーコンディショナーのカタログが必要です。このカタログに設備の寸法が記載されていれば、先の11で必要となる設備図面を兼ねることができます。

・ワット数の分かるパネルやパワコンのカタログが必要
・カタログに設備の寸法が記載してあれば、11の設備図面が不要となることも
・カタログの型番と見積書など他の書類との型番が違うと受理されないこともある
・導入する業者が用意してくれるのがほとんど

14:排水計画図

雨水や雑排水の排水方法が、わかる図面が必要です。
記載方法は自治体によって異なるので、作成前に確認しておく必要があります。

・雨水の流水方向を矢印で記載することもある
・「敷地内自然浸透」との文言でOKの場合もある
・自治体で記載方法が異なるので要確認事項となる

15:資金計画書

資金計画書は、設備の設置と撤去に必要な総額を、上回る資金があることを証明する書類です。既に工事負担金を支払っている場合は、その旨も別途記載が必要となります。

・設備を設置、撤去する費用を上回る資金があることを証明する
・この書類も行政書士や司法書士に依頼して作成する

16:資力を証する書類

15の資金計画書に記載してある資金が、本当に存在していることを証明する書類で、自己資金でも融資でも問題ありません。

自己資金であれば、1ヵ月以内の預金の残高証明書の原本、融資利用では融資証明書の原本、補助金を使うなら内示通知書が必要です。

ネットバンクの場合は通帳がないので、残高が分かる印刷物でOKとなります。
企業や個人など、金融機関以外からの借用の際は、相手側の残高証明が別途必要となります。

17:設置および撤去の見積書

ソーラーシェアリングはあくまでも一時転用であり、最終的には撤去するので、申請時には設置の見積書と撤去の見積書の、2種類が必要となります。

この2種類の見積額を合わせた金額よりも、多くの資金を有しておく必要があります。

18:撤去にかかる合意書

撤去時には誰が費用を負担するのかを証明した書類で、設備を撤去する旨と撤去費用の負担に同意した内容となっている必要があります。

19:設置や撤去に係る工程表・農地復元計画書

設備の設置や、設備を撤去する際のスケジュールが分かる書類です。スケジュール表(工程表)でなく、自治体が作成した「農地復元計画書」を使用するケースもあります。

・設置許可の見込み以降の工程表を作成
・撤去については内容を問い合わせて作成する

20:経済産業省の認定通知書の写し

21:発電会社の受給契約申込書の写しまたは回答書

先の認定証の写しと同様に、発電区画ごとの書類が必要です。発電事業者が申請者と異なる場合は、申し込み内容の変更が受理されたことが分かる資料を添付します。
受理印があるか、受付の日付が記載のある書類でないとダメです。

・発電区画ごとの受給契約申込書の写しまたは回答書が必要
・受理印もしくは受付の日付の記載が必ず必要

22:売電による収益シミュレーション

設置する太陽光発電システムで、20年間の売電による収益シミュレーションを作成します。
初期投資や運用コストとの照合、黒字に転じるタイミングなどを、明確にシミュレーションした書類を作成します。

・20年間の収益シミュレーションを作成
・黒字になるタイミングなどを明確に示した書類が必要

23:営農計画書

定型の書式で、農作物の育成計画を記載した資料を作成します。

・ソーラーパネル下部で育成する農作物の種類
・ソーラーパネル下部の農地面積と営農予定面積
・営農者の経歴、育成スケジュール
・営農に使用する農具
・育成が問題なく行なえる根拠
・これらの内容を記載した資料の作成が必要

24:農作物の生育に係る根拠データ

23の営農計画書の内容を、根拠づける資料となります。

・周辺地域の平均収穫量の8割以上の収穫が行える根拠
・収穫した作物の品質に問題のない根拠

25:知見を有する者の意見書

営農計画書やその根拠資料の信憑性を担保するために、JA・農業支援センター・大学教授・研究者などによる、意見書を添付する必要があります。

・営農計画書や根拠資料の信憑性を担保しなければならい
・JAや農業支援センターなど、農作物の有識者による意見書を添付

26:埋蔵文化財の確認書

申請地が埋蔵文化財指定区域に該当するか、該当しないかを確認した書類です。各自治体の教育委員会で「埋蔵文化財包蔵地の照会申請」を行ない、回答書を添付することとなります。

・各自治体の教育委員会が発行する「埋蔵文化財包蔵地の照会申請」を添付
・埋蔵文化財包蔵地内の場合は、別途93条申請を行なう必要がある

以上26の書類以外にも求められる書類が必要となるケースもある

ここまでで、解説した申請に必要な26の書類以外にも、農地の状況や自治体によっては、必要な書類が追加されるかもしれません。。そのため、正式に申請をする前に各自治体の農業委員会で、申請書類の確認をしておきます。

申請方法と流れ

ソーラーシェアリングを申請するには、先に解説した26の書類を作成しないとなりません。その中のほとんどが素人では用意したり、作成したりできない書類が多くあります。

一時転用申請は、行政書士や司法書士に依頼することがほとんどですし、太陽光発電システムを導入する業者の選定も行なう必要があります。また、有識者の意見書も必要となるので、専門機関への問い合わせも不可欠となってきます。

結論として、申請はソーラーシェアリングをサポートする会社に依頼することになります。書類作成も面倒で専門的な知識が必要ですが、申請手順も面倒。そのため専門のサポート会社に任せるのが一番手っ取り早いです。

次に申請の手順を解説しますので、自分で行うことが可能かイメージしてみてください。

ステップ1:農業委員会事務局での事前協議

事前に電話で管轄の農業委員会事務局に、ソーラーシェアリングの申請の相談を行ないます。そして、申請に必要な書類一式を確認します。

事前に許認可が必要なケースや届出が必要なケースでは、改めて担当の部署とヒアリングを行なう必要も生じます

ステップ2:ソーラーパネル下部での作物を選ぶ

次に、ソーラーパネル下部で耕作する作物を決定します。

毎年確実に収穫できる作物でないと、認可を取り消される可能性もあるので、ここはしっかり選ぶ必要があります。

ステップ3:申請書類の準備

ここでは農業委員会でヒアリングした、申請に必要な書類の作成を行います。

ステップ4:農地転用許可申請前に済ませておく許認可の申請

農地の一時転用を申請する前に、終えておかなければならない許認可を終わらせておきます。
たとえば、土地改良区域内に申請農地がある場合、「土地改良区の意見書」が農地転用時に必要となってきます。

ですが、ソーラーシェアリングの場合は一時転用であり、継続して農地として利用するので意見書を交付してもらえないケースもあるようです。このようなケースでは、どのようにすれば許可されるのか、農業委員会に相談しておく必要もあります。

ステップ5:窓口でシェアリングの申請

シェアリングの申請は農業委員会で行ないますが、多くの書類を確認する必要があり、担当者が書類から情報を確実に読み取れなければ、説明を求められることもあります。

書類を作成するだけでなくしっかり内容を口頭でも説明できないと、その書類を補完する追加書類を求められることもあるため注意しましょう。

ステップ6:許可・不許可の決定

申請書類の提出が完了し、農業委員会の総会が無事に終われば、2日~1週間ほどで「許可」「不許可」の決定がでます。

許可証交付の事務手続きは数日かかることもあるので、最短でいつ許可証を受取れるか確認しておくことが大切です。

また、許可証が交付されても他の届け出や許認可が必要なケースもあるので、注意が必要です。

・都市計画法などにかかる開発行為の届出や許可も行う必要がある
・消防法にかかる発電設備の設置届も行う
・施設を設置するための工事目的に関係するすべての許認可が必要

ステップ7:工事着手⇒発電事業&営農スタート

ここでやっとソーラーシェアリングの工事を行い、営農をスタートできます。工事完了後は、速やかに農業委員会に「工事完了報告」を行います。

・工事完了後は速やかに工事完了報告書を提出する
・工事が3ヵ月以上遅れる場合
・工事が3ヵ月以上にわたる場合
・上記の場合は、定期的に「工事進捗状況報告」を行なう必要がある

ステップ8:年1回の状況報告と3年(10年)ごとの更新

毎年2月末までに「設備の下部の農地における農作物の状況報告」を提出します。

毎年計画している収穫量がないと、農業委員会から指導や勧告を受けることとなり、最悪のケースでは撤去命令が下されます。

・1年間の営農状況を写真入りの日誌を作成しておく
・日誌で真摯に営農を行っていたことをアピールする
・できるだけ予定の収穫量を確保する努力を行う

また、シェアリングは原則として3年毎に再申請を行ないます。条件を満たせば再申請の期間が10年に延長されるケースもあります。

まとめ

一般家庭におけるFITが終わりつつある現状では、大規模な太陽光発電システムで売電できるのは、ソーラーシェアリングのみとなっています。

有益性は魅力ですが、あくまでも農業が主体であることが重要です。また、申請には多くの書類が必要であり、手続きも一筋縄では完了しません。

そのため、ソーラーシェアリングに詳しい会社にサポートを依頼するのが一般的となってきます。現在ではさまざまな会社がシェアリングのサポートを行なっているので、比較的簡単に見つけることができます。

農地を遊ばせている方にとっては、ターニングポイントになるかも知れないので、専門の会社に相談して、ソーラーシェアリングに取り組んでみるものよいですね。